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名古屋地方裁判所 平成8年(わ)134号 判決

裁判所書記官

成田雅治

(1)

本店の所在地 愛知県豊田市志賀町花柄三七番地の五

法人の名称

株式会社丸商クラウンズゴルフクラブ

代表者の氏名

金原福男こと金成道

(2)

国籍 韓国

住居

名古屋市昭和区高峯町一二九番地

会社役員

金原福男こと金成道

一九四〇年五月二八日生

右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、次のとおり判決する(公判出席検察官名倉俊一)。

主文

被告法人株式会社丸商クラウンズゴルフクラブを罰金一五〇〇万円に処する。

被告人金成道を懲役一年に処する。

被告人金成道に対し、この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告法人株式会社丸商クラウンズゴルフクラブ(平成四年九月一五日までの商号は株式会社丸商志賀ゴルフクラブ、以下「被告会社」という。)は、愛知県豊田市志賀町花柄三七番地の五に本店を置き、ゴルフ練習場を営む資本金一〇〇〇万円の株式会社であり、被告人金原福男こと金成道は、被告会社の代表取締役として、被告会社の業務全般を統括しているものであるが、被告人金成道は、被告会社の右業務に関し、法人税を免れようと企て、売上の一部を除外するなどの方法により、所得の一部を秘匿した上、

第一  平成二年一〇月一日から平成三年九月三〇日までの事業年度における被告会社の実際の所得金額が八〇四五万一二二九円であり、これに対する法人税額が二八九六万六三〇〇円であるのに、平成三年一二月二日、愛知県岡崎市明大寺本町一丁目四六番地所在の所轄岡崎税務署において、同税務署長に対し、同事業年度の所得金額が一九四五万一二二九円で、これに対する法人税額が五八九万五三〇〇円である旨の虚偽過少の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、被告会社の同事業年度における正規の法人税額との差額二三〇七万一〇〇〇円を免れ、

第二  平成三年一〇月一日から平成四年九月三〇日までの事業年度における被告会社の実際の所得金額が八七八三万一八〇四円であり、これに対する法人税額が三一九八万四三〇〇円であるのに、平成四年一一月三〇日、前記岡崎税務署において、同税務署長に対し、同事業年度の所得金額が六八七万八五三三円で、これに対する法人税額が一七三万三六〇〇円である旨の虚偽過少の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、被告会社の同事業年度における正規の法人税額との差額三〇二五万七〇〇円を免れ、

第三  平成四年一〇月一日から平成五年九月三〇日までの事業年度における被告会社の実際の所得金額が五六八七万七九〇円であり、これに対する法人税額が二〇四一万五九〇〇円であるのに、平成五年一一月三〇日、前記岡崎税務署において、同税務署長に対し、同事業年度の所得金額が七〇五万七二一六円で、これに対する法人税額が一八二万五六〇〇円である旨の虚偽過少の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、被告会社の同事業年度における正規の法人税額との差額一八五九万三〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

括弧内の記号番号は、検察官請求証拠の記号番号(番号は記録上算用数字)である。検察官に対する供述調書は「検察官調書」と記載する。

判示事実全部について

一  被告人金成道の当公判廷における供述

一  被告人金成道の検察官調書六通(乙一ないし六)

一  李徳雄(甲一一)、永江澄雄(甲一二)、金光浩(甲一三)及び金夏子(二通。甲一四、一五)の各検察官調書

一  検察事務官作成の捜査報告書(甲四)

一  大蔵事務官作成の「脱税額計算書説明資料」と題する書面(甲五)及び査察官調査書四通(甲六、八、九、一〇)

一  検察官作成の捜査報告書(甲七)

一  登記簿謄本(乙七)

判示第一の事実について

一  大蔵事務官作成の証明書(甲一)

判示第二の事実について

一  大蔵事務官作成の証明書(甲二)

判示第三の事実について

一  大蔵事務官作成の証明書(甲三)

(法令の適用)

一  罰条 被告人金成道について、判示第一ないし第三につきそれぞれ法人税法一五九条

被告会社について、判示第一ないし第三につきそれぞれ法人税法一六四条一項(一五九条)

二  刑種の選択 被告人金成道の関係で、所定刑中いずれも懲役刑を選択

被告会社の関係で、いずれも情状により法人税法一五九条二項を適用

三  併合罪の処理 被告人金成道の関係で、平成七年法律第九一号による改正前の刑法(以下「改正前の刑法」という。)四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の最も重い判示第二の罪の刑に法定の加重)被告会社の関係で、改正前の刑法四五条前段、四八条二項

(各罪の罰金の合算額以下で処断)

四 刑の執行猶予 被告人金成道の関係で、改正前の刑法二五条一項

(量刑の理由)

本件は、ゴルフ練習場の経営等を目的とする被告会社の代表者であった被告人金成道が、利益を調整して将来の不況や経営危機あるいは新たな設備投資や事業資金を貯えようとして、ゴルフ練習場の売上を除外するなどの不正な方法により、三事業年度にわたり合計七一九一万円余りの脱税をした事犯であり、脱税額が多額で、ほ脱率も高く、犯情はよくない。

しかし、被告人金成道において、自己の行為を率直に反省し、本税、重加算税及び延滞税を既に全額納付していること、同被告人には前科前歴がないことなどの酌むべき事情もあるので、各主文の刑を量定した上、被告人金成道について、その刑の執行を猶予することとする。

(裁判官 三宅俊一郎)

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